祈りの日々

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「巫女様、口へどうぞ」 横から差し出されたグラスの中身を見ることなく喉に流し込んでいく。 何で作られているか。などと考える暇なく流し込むその液体も昔から何も変わらない。 ここで躊躇して時間を食う方が後々に響く。 そう長い間経験して分かっているからこそ一気に飲み干した空のグラスを側の者に渡した。 渡された者は中身が空である事、マイラの喉が飲み干した事を確認し頭を下げて去っていく。 これもまた同じ事だ。 そして、そのまま立っていれば衣服が着せられてベールがかけられる。次には手を引かれて大きな丸い石の上へ上げられるのだ。 祭壇と呼ばれるその場所はマイラ以外は上がる事が出来ない。 何故? そう疑問に思っていた時期もある。 何故ここに。 何故自分が。 何のために。 だが、理由などない。 マイラが白き巫女である限り 永遠に続く作業。 そういう決まりなのだ。 「白き巫女様、祈りの時間です」 白き巫女 そう呼ばれて何年経っただろうか。 もうマイラと呼んでくれる母はおらず誰も自分の名を呼んではくれない。いや、マイラという人物はもう存在すらしていない。 白い髪は長くなり腰まで伸び、体もだいぶ成長した。だが、陽に当たる事がほぼないため肌は白く体も細い。 足の間にある象徴がなければきっと女性だと思われるだろう。 目も母と同じ黒になる事はなく、くすんだ灰色のような色のままだ。 そして、左胸に浮かび上がる花模様。 アザのように見えるそれは、肌から浮かび上がるように盛り上がっている。 そのアザを指先でザリっと掻く。 「巫女様、お辞め下さい」 すぐに側付きに嗜められ指を離す。 色んな事を諦めて強制的にやらされる事にも慣れたが、胸の模様を掻いてしまう事だけはやめられずにいる。
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