望まざる子

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「団長、申し訳ありません」 先程までアルドに敵意を向けていた男は、間に入った男に対して頭を深く下げて剣を収めた。 「やるべき事を見失うな。王の命令に背く事は許されないぞ」 「はっ。申し訳ありません」 アルドは2人が話している隙に短剣を抜こうともがき続けているがビクともせず、逆に胸ぐらをグイっと掴まれて団長と呼ばれた男の顔付近に手繰(たぐ)り寄せられた。 「お前、俺の話を聞いていたか?母親を助けたければ剣を収めろ。まだ、彼女は息がある。」 男の言葉にハッと我に返り短剣から手を離し掴まれていた胸ぐらを全体重をかけて振り解く。 そのままアルドは母の元へ走りだした。 「母さん!しっかり!」 母は確かに息をしているが、背中から流れ出る血が止まる事がない。 母を支えるアルドの手も服も血が染み込んでいきベットリと張り付いている。 「どけっ。街まで俺が運ぶ」 団長と呼ばれた男は軽々と母を抱き上げ足早に馬の方へと丘を下って行く。 「母さんに触るなっ!!」 男は冷淡な顔でアルドの方へ向き直ると、この時間が無駄だと言わんばかりにため息をついた。 「小僧、お前が担いで行くのと俺とはどちらが助かる可能性が高い?意地で己の母を殺す気か?」 反論する隙も与えず男はアルドを無視して前を行く。周りの兵士達も団長と呼ばれた男の後を追い始めた。 クソっ! アルドは彼らに追いつくため前のめりで走り出す。今はとにかく母を助けたい一心で血濡れの体を引きずるように後をついて行った。
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