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「マイラ何度言えば良いのです。街へ降りてはなりません」
まだわずか4歳にも満たない小さな子に理解できないのは分かっている。
だが、母であるサンはそれでも我が子のために心を鬼にして強く戒める。
それが、我が子を守るためだからだ。
「母様、ごめんなさい」
目に涙を溜めて謝る子に母であるサンも心が痛むがそれでもこれは絶対に守らせる必要があるのだ。
何故なら街には祭司達がいる。
彼女達に見つかればマイラは連れ去られてしまい二度と会う事など出来なくなるからだ。
連れ去られて
二度と陽の目を見る事なく
閉ざされた空間で
ただ存在し続ける。
白き巫女。
その名の通り
巫女の髪は白く目も白に近い灰色
そして胸には花模様の紋章
それは別名、祈りの精霊と呼ばれている。
我が子マイラを授かった時、本来であれば国に進言せねはならなかった。
白き巫女を産み落とした。と
そうすれはこれまでの苦労もなくなり、褒美として与えられるであろう財宝により楽に生きられた。だがそれは我が子との永遠の別れを意味する。
サンのいるタールという国は周りの国からは切り離された小さな島国だ。その特質ゆえに周りの国からも侵略はされず小さいながらも独立国として存在している。
タール国の特質。
この国を司るのは女性である祭司達であり中枢機関に男性が足を踏み入れる事は出来ない。
そして祭司達が祈りを捧げる神聖な場所である祭壇に上がる事を許される者はただ1人。
白き巫女のみ。
タール国の信仰は白き巫女。
その昔、巫女が海の神にその身を捧げる事で国の災いを防いだとされ数十年に一度その啓示を受けた子供が産まれると伝えられている。
巫女が存在し祭司達が祈りを捧げる。
その行為こそが国の信仰であり象徴。
そして平和を願う信仰心。
タール国にとって白き巫女の存在は絶対であり守るべき神である。故に、白き巫女の誕生はタール国民全ての願いなのだ。
国の平和
そして自国の富を
祈り捧げる象徴
それが白き巫女
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