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「母様、苦しいの?大丈夫?」
マイラは母サンの枕元に小さな体を寄せて懸命に母に問いかけていた。
いつもは笑顔で優しく話してくれる母の息は荒く苦しいためか瞼を開ける事さえ出来ないようだ。
「母様、母様」
マイラは母の手の平をそっと握る。
いつもマイラを撫でてくれるその手はたぎるように熱を持っている。
どうしよう。
ここには何もない。
辺りを見回しても母を治してくれそうな物は何も目に入らない。
わずかな水と木の実があるだけだ。
母と2人この場所しか知らぬマイラだが、過去には母に連れられて街に降りた事がある。
この前は1人で行こうとして見つかってしまったが。
だから、行き方は分かる。
今から出れば明るいうちに家に戻ってこれるはずだ。
マイラは手縫いで作られ美しい刺繍が施された布を持ち家を飛び出した。
これを売って母に何か与えなければ。
何が母にいいかも分からないが、街人に聞いたら教えてくれるかもしれない。
そんな期待を胸にマイラは頭巾を深く被り山道を降りていく。
母に外に出る時には必ず被るように言われている頭巾を手で握り緊張のあまり震える体を懸命に動かす。
早く
早く
母様を元気にしなくては
マイラは小さな足で街へ続く道を走り続けた。
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