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「ぎゃっ!」
「ぐぁっ!!」
船員達が何人か弓矢にやられたのかドサッと床に倒れる音が聞こえ倒れているのが視界に入った。
「アルド!!どこからだっ!!」
マイゼンの叫び声が聞こえる。
まだ太陽が水平線から出ようとしている時間帯に加えて少し霧がかかっているため視界が悪く、遠くの方まではハッキリとは見えない。
相手が何処から奇襲をかけているのかが分からない間にも次々に矢が撃ち込まれている。
アルドは全神経を集中し音に耳を澄ませる。
ガシュンっ
ガシュンっ
と弓矢が船の至る所に突き刺さり音を立てている。かなり勢いのある弓矢の威力。人の力だけではこのスピードは無理なはずだ。
アルドはハッとし上空を見上げた。
ほんの一瞬、キラリと光るものが目に入る。
「ロイド!マイゼン!上だ!上からだっ!!」
アルドは降り注ぐ弓矢を避けながら巫女を抱いたまま身を隠せる場所に走る。
本当ならば船室まで行きたいが、弓矢が降り注ぐ中、巫女を抱いたままでは到底無理がある。
とにかく巫女を安全な場所に避難させなければならない。
サミュ達は巫女の無事よりも連れ帰る事に重きを置いている。きっと傷だらけになろうとも巫女を引きずってでも連れ帰るつもりなのだろう。
闇雲に落ちてくる無数の弓矢がそれを物語っている。
「ア、アルドっ」
腕の中で目を覚ました巫女がアルドの名を呼んだ。
「巫女殿この場所なら大丈夫だ。絶対にここから動くな」
アルドは巫女を死角になる場所に押し込め「いいですね?」と念を押した。
「い、いやですっ。アルド。お願いっ、1人は...1人は嫌ですっ」混乱しているのだろうか明らかに狼狽えた様子でアルドの服を必死に掴んできた。
「巫女殿、おそらくサミュ達の追っ手だ。上から奇襲を受けているから止めに行かなくてはならない。でないと船員がやられる。そうなればタール国からは出られない」
アルドは出来るだけ落ち着いた声で淡々と巫女に話した。状況は危機迫るものだが、今は巫女に落ちついてもらうのが先決だ。
「いいですね?」
再度、アルドは巫女に言い聞かせる。
絶対にここから動くなと。
「.....アルドは....戻ってきますか?静かに待っていたら、戻って来る?」
不安に目を潤ませた巫女の頬を両手で包みアルドは告げた。
「絶対に戻る。だから、それまで絶対にここから離れるな」
うん。と2回ほど頷き巫女はアルドの目を見た。
その目には涙が溢れて今にもこぼれ落ちそうだった。
思わずアルドは巫女の額に口付けをし「約束する」そう言い残してその場から飛ぶように駆け出した。
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