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相手が上から攻撃しているせいで姿が見えないのもあり恐怖心が勝るのだろう船員達が逃げ惑う姿が目に入る。
至る所に怪我をした者すでに動かなくなった者もいて船の上はさながら戦場のような光景になっていた。
「闇雲に逃げるな!体を隠せる場所まで走りきれ!!」周りの者達に叫ぶと一斉に皆走り出した。
アルドは降ってくる弓矢を剣で打ち落としたながらマイゼンとロイドの姿を探す。
「アルド!!」
ロイドの声のする方がへ走り込む。
マストのちょうど下に当たる視界になる場所にロイドもマイゼンも身を隠しながら近くに降る矢を打ち落としていた。
体を低くして滑り込みながらロイド達のすぐ脇に身を隠す。
「相手はおそらく祭司達だ。意地でも巫女を連れ帰る気だろうな」マイゼンは降り注ぐ弓矢の上空を睨みアルドに「どうする?」と声をかける。
「とにかく俺はあそこまで上がり奴らを止める。でないとこのままだと皆やられてしまう」アルドはマイゼンに答える。
「かなり急な崖だぞ....」ロイドは上を見上げながら呟いた。
「山育ちを舐めるなよ。あんなもんは崖とは言わない」アルドは不敵に笑う。
生まれ育った場所はもっと入り組んだ山沿い。
あそこに比べたらちょっと急な坂程度だ。
アルドにとっては余裕の範囲。
ふと、走り出す前にアルドは振り返りマイゼンの方に顔を向けた。
「マイゼン頼みがある」
「....何だよ」
アルドは今いる場所の対角線の場所を指差し「あそこに巫女殿がいる。もし俺が戻らない場所は助けに行ってやってくれ」
「......」
「マイゼン」
「....何で俺に言う?」
マイゼンの答えにアルドはふっと笑い、そして答えた。
「お前を信頼してるからだよ。マイゼン」
アルドの言葉に驚いた顔をしたマイゼンは顔を背けた。そんなマイゼンを横にいるロイドも微笑みながら見ている。
「.....お前何か隠してるだろ。後で聞かせろ。
だから必ず戻ってこい。」
マイゼンはアルドの肩を力強く叩き送り出した。
「アルド!巫女の事は俺とマイゼンに任せろ!」
ロイドの声を背中越しに聞きながらアルドは弓矢が降り注ぐ場所に再び走り出す。
目指すは崖の上。
先程からチラリと目に入る赤いものを目掛け
アルドは突き出した岩に足を引っ掛けながら飛ぶように駆け上がって行く。
それはまるで背中に羽があるかのような軽やかなもので、あっという間に崖の上に登り切る。
「あいつの足にはバネでもついてんのか...」
そんなマイゼンの呟きが船の上に残りアルドの行方をロイドと共に心配そうに見上げていた。
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