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目の前にマイゼンの手の平が差し出された。
彼の目は「どうした?早くこいよ」と物語っているかのように眉間に皺が寄っている。
じっと見つめられるとどうしていいか分からない。
それにアルドと約束したのだ。
この場所で待つと。
「あぁ、まぁ....さっきは悪かったよ。意地悪して。とにかくここは狭いから出た方が体も楽になる。ほらっ」
マイゼンが手を上下に動かしこっち来いとジェスチャーしている。
でも、動くなと言われたのだ。
だからマイラは動けない。
約束は守る。
「ア、アルドに言われたので。ここで待つ様に。だから私はここにいます」
だが、そんなマイラの言葉には反応せず、マイゼンはその場からなかなか離れない。だからマイラはもう一度アルドと約束した事を告げた。
自分はここでアルドを待つと。
「あぁ、うん。だから、そのアルドなら追っ手を倒しただろうからもう戻るよ。弓矢が止まっただろ?」
そうか、それで先程から静かになったのか....。
マイラはその場でコクっと頷き、理解した事をマイゼンに伝えた。
「アルドから言われたんだよ。巫女さんを頼むって。とりあえず敵は大丈夫そうだから部屋に案内する。ここは不安定だし体がキツいだろ」
そんなマイゼンの意外すぎる優しい言葉にマイラは驚き思わず「えっ」と声を発した。
「何だよ。俺だって女性をこんな場所に長時間いさせるほど鬼畜じゃねぇよ。ほら、手!」
あ、そうか。
自分を女だと思っているのだ。
それはそうだ。
巫女は女。
それが当たり前の事であり疑問にさえ思わないだろう。
ましてや、マイラの体つきは男らしい要素は全くない。
改めて言われると周りを欺いている様で心苦しい。マイラは視線をマイゼンの手から逸らし下に向き黙り込んだ。
誰にも言えない。
自分が男なんて。
白き巫女は女。
そうでなくてはならないのだ。
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