悲しみの決別

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「巫女様、今から船員達が動き回ります。それにここは樽が重なってますし危ないです。一旦出ましょう。狭い船室ですがここよりは安全なのでアルドも安心します。」 そうロイドが跪きマイラの目に視線を合わせてゆっくり話してくれた。 ロイドの柔らかい眼差しとアルドが安心する。その言葉にマイラは了承するように頷いた。 「え?ちょっと、そりゃないよ。俺、手まで差し出したのに。何?この態度の違い。ひどくねぇ?」マイゼンの嘆きにロイドは呆れたような目で見つめ「お前は言い方がなってない。」と一言だけ言いマイラの手を取り立たせてくれた。 しかも、「手を取る無礼をお許し下さい」の言葉とともに。 「げぇ。どっから湧いてくんだよそんな台詞」とマイゼンはウンザリだと言うように顔をしかめ上を見上げた。 マイゼンは、さらに何かを言いたそうに口を開いたまま、だが、顔を上げたまま目を凝らし何かを見定めるようにして空中を睨みつけている。 「あれは...」 そうマイゼンは呟くと、いつものふざけた様子はなりを潜め真剣な顔で上空を睨みつけたままピクリとも動かない。 緊迫した様子にロイドもマイラも同じ様に顔を上に向けた。 「アルド!!」 そのマイゼンの危機迫るような声に驚き、マイラの体が跳ねる。 何? どこ? 目の先には崖が高くそびえ立ち、岩場が突き出た部分はまるでナイフの様に鋭利に尖っている。しかもその下は荒波が崖にぶつかる様に激しく波打っている。 と、その時マイラの視界に赤いものがかすめた。 あれは、もしや..... 「サミュ....」 おそらく人の動きに合わせて赤いベールも揺れているのだろう。赤いベールは第一祭司教の証。サミュは眠る時さえ被ったままで赤いベールを常に身につけている。 そのすぐ側にもう1人誰かいる。 まさか.....。 アルドとサミュがまた対峙しているのだろうか。 しばらく2人とも動きが止まっていたが、ふいに動き始めた。 目を凝らし体を前のめりにして見ていると、アルドがサミュを掴んだまま崖に向かって行くのが見えた。 まさかっ そう思った瞬間に、2人は崖から真っ逆さまに落ちて行く。海の荒波に飲まれる寸前にマイラは叫んだ。 「アルド!!! サミュ!!!」 叫ぶと同時に手の平で目を覆った。 体は震え指先は冷たくなっていく。 自分のせいだ 自分が逃げたから 自分のせいで2人が犠牲になるなんて.... ほんの少しでも願ったのがいけなかったのだ。 自由になりたいなどと.....
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