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「サミュ様だ。」
「サミュ祭司教様だ」
それまでマイラの周りにいた人々は波が引くように左右に分かれ、まるで一本の道が出来たように開かれた。
その空間から数名の人達がマイラに向かい歩いてくる。その先頭に立つ人は頭から赤いベールを被り目元近くまで覆われている。
シャラン、シャランと鈴のような音色を鳴らしながらその人達はマイラの目の前まで歩み寄ってきた。
サミュと呼ばれた人だろうか、先頭の人がマイラの髪を手に取りじっと凝視しながら観察し始めた。マイラは怖さのあまり逃げる事も出来ず足が地面に引っ付いて離れない。
しばらくそのまま髪を観察しマイラの瞳を凝視した後、いきなり首元に手をかけられガバっと衣類を剥がされた。
「これはっ.....間違いないっ。巫女様の印!
急ぎお連れせよっ!」その一言が発せられるとすぐに周りにいた者達がマイラを担ぎ上げ何処かへ連れて行こうとし始めた。
「やめて!おろして!母様の元へ帰るっ!」
マイラは手足をバタつかせて暴れるが大人の力には到底敵うはずも無くそのまま有無を言わせずにマイラは連れ去られていく。
シャラン、シャランと鳴る音とマイラの抵抗する声だけが辺り一面に広がっていたが、人々はそんな光景をただ見つめているだけで誰もマイラを助けようとはしない。
それどころか、その顔は皆輝きに満ちていて白き巫女様が現れた。そう口々に呟き手を合わせて祈り始めた。
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