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(離婚……?)
フォローしていなかったひまわりさんのアカウントは、どこから調べよう。
私はひとまずハナミズキさんのプロフィール画面に飛んだ。そこには、夫→@でひまわりさんのアカウント名リンクが記載されていた。
私が見ていた数年前から、二人は互いのアカウント名を自分のプロフィールに出していたのだ。
理由はなんとなくわかる。
リアルで美男美女でなおかつ、SNS上ではフォロワー4桁のアカウントだったからだ。
自分は既婚者であり、相手とはSNS上でもつながっていて、事情はなんでも通じていますよ、というアピールをしていたのだろう。面倒よけだ。
ひまわりさんをタップしてみる。
そちらも鍵アカウントになっていて、フォロー外からは現在の投稿は確認できない状態だった。プロフィール欄には妻→@でハナミズキさんのアカウントが記されたままだった。
互いのプロフィール画面に、相手のアカウント情報を残している以上、二人が離れた理由は離婚ではないだろうなと察せられる。
そこで、私はもうかなり相当動揺していた。
自分の生活にはほぼ関わりのない美男美女夫婦に、ここ数年の間に起きたことを思い、はっきりと落ち込んでしまっていた。
ハナミズキさんは、ひとりで子どもの「ガーベラちゃん」を育てていた。
“ほんとうにわたしはだめで”
“ひまわりさんがいないと”
“保育園の書類もうまく書けなくて”
“ぜんぶひまわりさんがやってくれていたから”
“本当にもう会えないのかな”
“こんなことになるなんて、思わなかった”
“ひまわりさんがいないと”
“生きていけないの”
いるべきひとが欠けてしまっている、やるせなさ。
大きすぎる空白。
今日も準備が終わらない、何か忘れている気がする。私はだめな母親。
WEBに向かってひとり呟いて、ハナミズキさんはガーベラちゃんと手を繋いで家を出る。
“いってきます”
“私は毎日、朝から疲れている”
“もう死んでしまいたい”
“ひまわりさんがいない”
* * *
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