小池和夫

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「ああっ残念、改装中か」 いつも行く家から5分のスーパーはシャッターが下りており、改装中のお知らせが貼ってあった。 和夫は踵を返し、家に向かう。 「今日はケチャップはもういいや。でもしばらくは駅の向こうまで買い物にいかないといけないのか、面倒だな」 ***** 翌日の夕暮れ時、和夫は家から10分の最寄り駅を超えたところにある大型スーパーに向かった。 「しばらく面倒だな、まあリュックしょってきたし多めに買っておくか」 「面倒だな」と口にはしたものの、本当はそれほど気にしていない。 今はもう世話をしなければならない父母もおらず、仕事もしていない。 有り余るような時間を持つ和夫には30分ぐらいの時間のロスはたいしてことではない。 駅前は、にぎわいを見せていた。 出口は西口と東口の2つのみの小さな駅だが、ぎりぎり東京通勤圏なのと、近くに学校がいくつかあるので、駅前はいつも人が多い。 コンビニやファーストフード店、学習塾などが並ぶ駅の東口、そこから東に延びる昔からの商店街と、この地域一の大型スーパーを中心としたエリアには明け方と深夜以外は人通りが絶えない。 今はちょうど学生の下校時間と、近隣で働いている人々の終業時間、夕食の買い物の時間が重なる。 気を付けなければ人にぶつかってしまうほどの人通りだ。 行きかう人々を眺めながら和夫はつぶやく。 「この中にカケルと麗華さんがいたりして」
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