ファンタジースフィア

小池和夫

和夫がここ数年入り浸っているVRゲーム「ファンタジースフィア」はGPS機能がついていて、ユーザー登録をしたときにいた場所に合わせて、近くでプレイしている人が紹介されるしくみになっている。

つまり近所の人とつながりやすいわけだ。

日本人の大部分はVRゲームの世界に来てまでわざわざ近所の人とつながりたがらないだろうが、ファンタジースフィアが開発された某国ではこの機能が受けるらしい。

この機能について事前に知っていて、ゲームの世界でリアルの知り合いとつながりたくない人は、初回ログイン時のみ人の多い街にでかけてスマフォモードでユーザー登録を済ませるそうだ。

和夫も月に１，２回は母親をデイサービスに預けて、都心に行っていたのだから、その時にスマフォでユーザー登録を済ませればよかったわけだ。

けれどもユーザー登録をした時点では、近所の人とつながりやすいことも、それを避ける方法も知らなかったので、うっかり人口10万弱のこの小さな町で初回登録をしてしまった。

そんなわけで、カケルや麗華をはじめ、和夫がゲームの世界で知り合う人はご近所さんの可能性が高い。

和夫がこのことを知ったのはゲームを始めて半年後だった。