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告白
「好きです。俺と付き合ってください」
それから数日後、突然学校の告白スポットである体育館裏に呼び出されて、耳の端まで真っ赤になった柚希に告白されるなんて、誰が想像しただろうか。
綺麗な睫毛がふるふる震えて、勝気な瞳がちょっと潤んでいた。
何があっても顔色一つ変えないあの、柚希が。
「えっと……誰のことが?」
なので、思わずそんな返しをしてしまった俺をどうか責めないでほしい。
「……っ鈴木のことだよっ……」
「ふぇ?! 俺? あ、俺じゃなくてC組の鈴木さんか! ごめん、ごめん! 変な勘違いして!」
「なんでそうなんの……っ……って今までの俺が悪いよな……ごめん……C組の鈴木さんのことじゃない……っお前のこと……ううん。友樹のことが好きです……っ俺と付き合ってください」
真っ赤な彼の顔が信じられなくて、俺はしばし固まった。
「やっぱ……俺なんか嫌だよな……俺鈴木に優しくなかったし」
彼の口から出てるとは思えない殊勝な台詞に俺は更に目をまるくした。
これ以上まるくならないくらいまるくした。
「困らせてごめん」
そして、彼が今にもその場から逃げ出しそうになったとき、俺は慌てて彼の腕を掴んで叫ぶように言った。
「……っいいよ……っ」
「え……っ?」
「ゆずと付き合っても、いい……」
こうして、絶対一生片思いと決まっていたはずの俺の片思いが唐突に終わる瞬間が訪れた。
だからちょっとだけ上から目線の返事になってしまったのは、どうか許してほしい。
俺の返事に柚希は頬を真っ赤に上気させて見たことないくらい綺麗に笑ってくれたので、俺はたっぷり五分は見惚れてしまった。
でも柚希も幸せそうな顔で固まっていたから問題はなかった。
だからと言ってそれまでいつも俺に塩対応であった彼との交際がどんなものになるのか、俺には全く想像ができなかった。
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