「特別な人」

1/1
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ

「特別な人」

 わたしの泣きぼくろを誉めてくれた人はさんざんいたけれど、泣きぼくろと目尻の間を誉めた人は、一人だけ。  彼は言った。「あんたのほくろと目尻の間には、無限が宿っている。まるで夜空だよ」 「詩人ね」とわたしは彼を見つめた。 「うぶ毛の感じが」と彼は微笑んだ。「とくに宇宙的だ」  彼は小さな地球儀を手にとり、どこかの海にキスをした。 「夜空にはしないの?」とわたしは言った。 「眺めているだけでいい」  彼はそう言ったきりだった。それ以上は何もせず、去ってしまった。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!