第五章 神亡き闇にて

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「……何だ、彼女は。嵐のようだったな」  最初に我に返ったのは、ネトナだった。続いてその言葉にアーゼもはっとして――外へと向かう。 「待て! どうする気だ!」  とっさにネトナが制止する。アーゼは振り返れば、 「彼女、船を追うつもりです! だから俺も行くんです! よくわからないけど……」  あの女はパウを探している。「追わないと」とまっすぐに出て行った。  その様子からわかる――彼女は追える手段を持っている。 「だから勝手に動くなと――」  ネトナが怒りの混じり始めた声を響かせる。しかし。 「まあまあまあ、落ち着いて落ち着いて、もういいでしょ」  エヴゼイがとたとたとやって来て、まずはネトナの前に立ち両手を見せた。するとネトナは言葉を呑み込んでしまって、エヴゼイは次にアーゼへ向かう。 「よし……わかったよ、頑張ってきなよっ!」  まるで気合を入れるかのように、彼はアーゼの背を叩く。アーゼはきょとんとしてしまったが、その間にミラーカがテントから出て行くのを見て、追って外に出た。 「……どう思う?」  アーゼがいなくなって少しして、ネトナが溜息を吐く。 「逆にネトナちゃんはどう思うわけ? アーゼくんの言ったあれこれ」  エヴゼイは尋ね返す。  ネトナは目を瞑れば、腕を組んだ後に、答える。 「……あの魔術師達が、我々を騙している。アーゼの言った可能性を疑わなかったことを、少し後悔している」 「ふむふむ?」 「巨大蝿を決死で捕まえた我々は、それで精一杯だった。そこに助けの手が差し伸べられたのだ……疑う余裕すらもなかったが……彼らはあのグレゴを弱らせる魔法薬を持っていた。そこに、疑問を抱くべきだった。研究したから魔法薬を作れたのではなく、彼ら自身が巨大蠅を生んだからこそ、弱らせる手段を知っているのではないか、と……」 「ほうほう?」  エヴゼイは椅子にふんぞり返れば、頭の後ろで腕を組んで笑う。 「まぁー様子見てみようかねぇ……僕の魔法道具は最高なんだ、知ってるだろぉ?」  その手の中に、小さな円盤を握っていた。
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