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質問を変えて、拷問は再開される。
あの青い蝶は「蝿化グレゴの共食いによって進化したもの」だと考えていたが、パウが吐いた通り別個体であるのならば、そもそもパウは「蝿化グレゴの共食いによる進化」を知っているのだろうか――尋ねればパウは、知っていると吐いた。一体だけ見た、と。
では、青い蝶は、蠅化グレゴを喰らったらしいが、共食いをした蠅化グレゴのように何か能力はあるのかという質問――またしても「わからない」という答えが返ってきた。
何か隠しているように感じられ、答えるまで問い詰めようと思ったが、より重要な質問があるため、後回しにすることに決めた。重要な質問とは「青い蝶はこれまでに何体のグレゴを喰らったか」というものだ――ようやく吐き出させた答えは「六体」だった。
六体――蝿化グレゴは全部で十二体。その半分を、青い蝶が食べてしまったことになる。それ以前にパウは、あの事故からいままでに、もう半分もの蠅化グレゴを片付けてしまった、ということになる……。
つまらない理由であるため、あえて彼には聞かなかったが、彼は恐らく、責任を感じて行動していたのだと、ベラーは考えていた。
彼は「人々のための魔術師」だ。だからアーゼから彼の話を聞いた際、正義のために行動しているのだと、予想はついていた。青い蝶が一体何であるかはわからないものの。
やはり彼は、厄介な相手だ。心の中で呟く。
その正義感に、再び憎悪が燃える。
――そんなものがなければ、可能性を秘めたこの弟子はきっと、自分と共に歩けたのだ。
「……そろそろ最後の質問にしようか」
感情を抑えて、笑顔を浮かべる。最後、という言葉に出口を見たのか、パウの赤い瞳がそろりとこちらに向けられる。だが質問を聞いて、パウはまた絶望に泣くのだった。
「さあ、いい加減に教えておくれ――それで、青い蝶はどこにやった?」
パウは頑なに情報を吐かなかった。また一本、また一本と針を刺していくが、そうしてやっと吐き出させた言葉は「知らない」「わからない」という言葉のみ。再び気絶してももう一度起こして拷問を続ける。それでも答えは変わらない。
本当に知らないのか。わからないのか。
それにしても、やはり、何か隠しているような気がするのだ。
すすり泣き、呻き声を漏らしながらうなだれるパウの顎を再び掴み、顔を上げさせる。短い悲鳴をあげて、パウはその手を払おうとするが、ベラーはしっかりと掴んで、またよそを見させない。
「そういえばパウ……お前の右目は、見えなくなっているのだね」
それとなく感じてはいたものの、改めて覗き込んで確信する。足を悪くしている様子もあり、またどうも魔力の調子や魔法の扱いが以前に比べて衰えているようにも思える。研究所での事故によるものか、と気付く。あの時彼は、ひどい怪我を負っていた。
赤い瞳を見つめていて、思いつく。
「この目は、何一つ見えないのかい?」
まだ生きている左目を片手で覆う。すると失明している右目が怯えたように動いたために、確かに何も見えていないのだと察する。
針を構える。
切っ先を向けるは、その赤い瞳。
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