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残り時間一分。
白チームのミッドフィルダーがボールを奪い、ゴール前で待っているフォワードにボールをパスする。
そして、フォワードがそのボールをすかさずゴール!!!
ピーッ
そこで審判の試合終了のホイッスルが力強く鳴り響いた__。
☆
星渡翔 十七歳。
サッカー部に所属している高校二年生だ。
先程まで、部活内で赤チームと白チームに分かれて試合をしていた。
俺のポジションはディフェンス。
そして、赤チームでキャプテンを任されていた。
試合は、残り一分まで両チーム同点で進んでいたのだが……。
白チームキャプテンのあいつが!
あいつにボールを奪われたのが運の尽きだった。
城光伊吹 十七歳。
俺と同じサッカー部に所属する高校二年生。
スラリとした長身、鍛え上げられた筋肉、女子受けする綺麗な顔、極めつけに低音イケボとくりゃ、モテないわけがない。
それに比べて俺は、身長も平均値だし、筋肉も平均、顔も、声も全て平均値で出来ているといっていい。
そんな、俺には無いものを全て持っているあいつは、応援に来ていた大勢の女子に囲まれている。
「伊吹くん! お疲れ様!」
「かっこよかったよ!!!」
女子たちは、口々にそう言ってタオルやら飲み物やらをあいつに渡している。
もうとっくに見慣れた光景だ。
そんなあいつを遠目に見ながら、俺はその場の片付けを終えて帰り支度を始めた。
「さてと、帰るか」
俺は、カバンをひょいと肩にかけるとその場を後にしようとした。
「待てよ、翔」
ふいに後ろから声を掛けられたが、俺はこの声を知っている。
俺は後ろを振り向き、そいつを見上げた。
「なんだよ、伊吹」
見上げた先には、俺を見下ろす『幼馴染』の顔があった……。
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