魔族領での手当て

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魔族領での手当て

それからというもの、ファビエルくんは僕のところへ時々遊びに来ていた。けれど、大きくなるにつれて来なくなってしまい、会うのは10年ぶりだった。久しぶりの再会に、嬉しいと思いつつも、僕はどう接したらいいのか分からずに困り果てていた。 「ケガしてるの?」 「あ、いや・・・大丈夫だよ。護衛もいるし」 「何処にいるんだ?」 僕は雨が吹き荒れる中、護衛が走り去った森の中を探すように見ていた。 「・・・手当が先だ。行こう」 ファビエルくんは溜め息をつくと、僕をお姫様抱っこした。突然の浮遊感に戸惑いながらも、僕はファビエルくんの首にしがみついた。 「待って・・・飛んでるの?」 「少し急ぐぞ・・・恐ければ、目を(つむ)ってて」 ファビエルくんに、しがみついていた僕だったが、風を切る音が凄くて恐くなり、途中からは本当に目を瞑っていた。 「着いたぞ」 ファビエルくんの声に目を開けると、天蓋付きのベッドの側に立っていた。ベッドに腰掛けると、ファビエルくんは僕の腫れている足に、薬を塗ってくれた。すると、腫れが引いたばかりか、ほとんど痛みは無くなっていた。 「うわっ・・・すごいね」 「良い薬草を使っているからな。ケガをしてもすぐに塗れば、たいていの傷は良くなる・・・悪いが、これを着てくれ」 手渡された衣服は、上質な布で作られていたが、1つだけ問題があった。 「ワンピース?・・・何だか聖職者が着る衣服みたいだね」 僕はヒラヒラしたスカートの裾が、くるぶしまである服を眺めながら言った。女性が着るような服に見えなくもない。 「すまない・・・それを着ていれば、俺の客だと分かるから、失礼な扱いはされないはずだ」 僕は魔族同士での、階級差別が激しいという話を思い出していた。 「分かった。城にいる間は、これを着るよ」 「レイル伯爵へは遣いを出したが、来るまでに時間がかかるだろう・・・ゆっくりしていってくれ」 「ありがとう・・迷惑かけてごめん。迎えが来たら、すぐに帰るから」 「いや、いいんだ・・・ずっと@!&#§」 「ごめん・・・最後は魔族語?よく聞き取れなかったよ」 「今日は疲れただろう?明日、皆に紹介するから、ゆっくり休んでくれ。おやすみリューン、良い夢を」 ファビエルくんは、そう言うと僕の額にキスをした。魔族では当たり前なのかなぁ?友達同士で額にキスをするの。 僕は何も聞けずに、出された食事を食べると、ベッドに入って眠りについたのだった。
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