37人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
魔族領での手当て
それからというもの、ファビエルくんは僕のところへ時々遊びに来ていた。けれど、大きくなるにつれて来なくなってしまい、会うのは10年ぶりだった。久しぶりの再会に、嬉しいと思いつつも、僕はどう接したらいいのか分からずに困り果てていた。
「ケガしてるの?」
「あ、いや・・・大丈夫だよ。護衛もいるし」
「何処にいるんだ?」
僕は雨が吹き荒れる中、護衛が走り去った森の中を探すように見ていた。
「・・・手当が先だ。行こう」
ファビエルくんは溜め息をつくと、僕をお姫様抱っこした。突然の浮遊感に戸惑いながらも、僕はファビエルくんの首にしがみついた。
「待って・・・飛んでるの?」
「少し急ぐぞ・・・恐ければ、目を瞑ってて」
ファビエルくんに、しがみついていた僕だったが、風を切る音が凄くて恐くなり、途中からは本当に目を瞑っていた。
「着いたぞ」
ファビエルくんの声に目を開けると、天蓋付きのベッドの側に立っていた。ベッドに腰掛けると、ファビエルくんは僕の腫れている足に、薬を塗ってくれた。すると、腫れが引いたばかりか、ほとんど痛みは無くなっていた。
「うわっ・・・すごいね」
「良い薬草を使っているからな。ケガをしてもすぐに塗れば、たいていの傷は良くなる・・・悪いが、これを着てくれ」
手渡された衣服は、上質な布で作られていたが、1つだけ問題があった。
「ワンピース?・・・何だか聖職者が着る衣服みたいだね」
僕はヒラヒラしたスカートの裾が、くるぶしまである服を眺めながら言った。女性が着るような服に見えなくもない。
「すまない・・・それを着ていれば、俺の客だと分かるから、失礼な扱いはされないはずだ」
僕は魔族同士での、階級差別が激しいという話を思い出していた。
「分かった。城にいる間は、これを着るよ」
「レイル伯爵へは遣いを出したが、来るまでに時間がかかるだろう・・・ゆっくりしていってくれ」
「ありがとう・・迷惑かけてごめん。迎えが来たら、すぐに帰るから」
「いや、いいんだ・・・ずっと@!&#§」
「ごめん・・・最後は魔族語?よく聞き取れなかったよ」
「今日は疲れただろう?明日、皆に紹介するから、ゆっくり休んでくれ。おやすみリューン、良い夢を」
ファビエルくんは、そう言うと僕の額にキスをした。魔族では当たり前なのかなぁ?友達同士で額にキスをするの。
僕は何も聞けずに、出された食事を食べると、ベッドに入って眠りについたのだった。
最初のコメントを投稿しよう!