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再会
ある晴れた日の昼下がり。
僕は父親である領主の許可を貰って、山奥にある秘境と呼ばれる場所で狩りを行っていた。
魔族領に近い位置にある山々には、魔物が出ることもあるため、領主の許可を得て、魔術具である『護符』を持参している者しか、狩りに出掛けることは許されていなかった。
『護符』は、一度だけ外敵から身を守ってくれる魔術具の御守りである。
父親であるレイル伯爵は、剣術の才能があって腕は立つのだが、気の弱いところがあり・・・特に家族には甘かった。
本来なら、領主の息子である僕は、山に入ることは禁止されている。
ちなみに、僕は生まれた時に辺境の地にある伯爵領に養子に出された第8王子である。フォルトナー国では、第8王子以降は生まれても、養子に出されるか、神官になるのが慣例であった。
僕が「狩りに行きたい」と言うと、レイル伯爵は「いいよ」と言って、護衛を50人付けようとしていた。普通じゃない・・・僕は護衛を1人に絞ると、軽装で山へ登った。
けれど、それが不味かった。雨が降ってきたので2人で近くにある山小屋へ避難すると、焚き火を焚いて雨が止むのを待っていた。
薄暗くなってくると、急に屋根が軋む音がして、屋根が吹き飛ばされていた。屋根の向こうから2メートルくらいの大きさの熊が、こちらの様子を伺っていた。
「逃げろ!!」
僕が力の限り叫ぶと、一緒に来ていた護衛は、一目散に逃げていった。僕も走ろうとしたが、足をくじいてしまったのか、その場から動けずにいた。
「助けて・・・」
熊が、こちらへ向かって走ってくるのを見て、僕は首から下がっている護符を握りしめた。それと一緒に、幼い頃に友達から貰った御守りを握りしめて心の中で祈っていた。
『誰か助けて・・・』
僕の祈りが通じたのか、目を閉じて開けると、目の前には黒いマントにフードを被った青年が立っていた。
「ファイアウォール!!」
目の前に現れた青年は、熊に向けて手を翳すと、指先から炎を放った。炎に包まれた熊は、のたうち回りながら森の中へ逃げ帰っていった。
「あの・・・ありがとうございます」
「いや、礼はいい・・・久しぶりだな、リューン」
魔術を使ったことから、おそらくは魔族だろうと思って警戒していたが、その顔には見覚えがあった。
「あれ・・・もしかして、もしかしなくてもファビエルくん?」
僕はファビエルくんを見て、遠い記憶・・・12年前、自分が7才だった頃の記憶を思い出していた。
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