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友達
リビングで珈琲を入れて、アイツが出てくるのを待った。
俺のTシャツを着たアイツが浴室から出てきた。
身長は高くても華奢な身体に大きめなTシャツが可愛いかった。
それを悟られたくなくて、少し冷たい声でアイツに言った。
「そう言えば、この前貸したスェットもまだ持ってきてないよな」
「ごめん、直ぐ持ってくる」
「マァ、いつでもいい・・・・・」
「いつも、廣畑君には迷惑ばかりかけてるね」
「別に迷惑だとは思ってないけど・・・・・」
「良かったら、今度晩御飯作るから僕の部屋で一緒に食べない?」
「お前が料理するって?」
「うん、結構美味いんだよ」
「じゃぁ、ご馳走になろうかな」
「いつがいい?」
「いつでも構わない」
「だったら、明日は?」
「わかった、お前の部屋に行けば良いのか?」
「うん、七時ごろでいいかな?」
「アァ」
ぬるくなった珈琲を飲みながら、そんな展開になった事を内心ほくそ笑みながら、計画通りではなかったが、それ以上の結果になった事が嬉しかった。
「お前さ、俺の事嫌ってたんじゃないか?」
「そんな事ないよ、この前も助かったし・・・・・そう言えば、まだこの前のお礼も言ってなかったね。黙って帰ってごめん!この前はありがとう!」
「俺こそ・・・・・悪かった」
「良かったら、友達になってくれる?」
「良いけど、お前には沢山居るんじゃないのか?」
「そうでもないよ・・・・・」
「いつも、お前の周りにはいっぱい集まってるじゃないか、あいつら友達なんだろ?」
「マァ、友達って言えば友達だけど・・・・・特に親しいわけじゃないよ」
「そうなんだ・・・・・」
「あのさ、お前って呼ばれるの嫌なんだけど・・・・・名前で呼んでくれない?」
「そうだよな、ごめん!布木君で良いか?」
「それもなんか・・・・・僕達、小学校から一緒だよね、侑星って呼んで欲しい」
「侑星・・・・・マァ、良いけど!俺のことも響って呼ぶか?」
「いいの?・・・・・でも・・・・・彼女が怒らないかな?」
「彼女?」
「そう、いつも一緒にいるあの人、恋人なんだろ?」
「あいつは恋人でも何でもないよ!バスケ部の友達ってだけだ」
慌てて訂正したものの、彼女と恋人同士だと言われていることは、誰もが知る事実だった・・・・・勿論、表面上だけとは言えそんな事情は他人には関係なく、恋人だと思われても仕方がないが、こいつにだけは、そう思われたくなかった。
笑いながら否定した俺にアイツは、少し不満そうな顔をした。
その表情の意味はなんだろう?
俺が嘘を言ってるとでも思ったのだろうか・・・・・
「俺には付き合ってる彼女も恋人もいない、完全フリーだ」
誤解されたくなくて、必死で言った俺にアイツは声を上げて笑った。
「そんなに必死にならなくても・・・・・響って、面白い人だったんだね」
「そうか・・・・・」
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