111人が本棚に入れています
本棚に追加
/46ページ
夢中
侑星の片想いの相手が自分だと分かって、それならもっと早く言ってくれれば、こんなに苦しい思いをしなくて済んだ・・・・・なんて、自分勝手な事を思いながら、お前の笑う顔が好きで、その笑顔を誰にも見せたくない。取られたない。
その優しさも、笑顔も、俺を呼ぶ声もぜんぶ独り占めしたいと欲が膨らんだ。
翌朝、駅から電車に乗って帰った。
アイツは後一週間バイトが続くと言った。
折角、両思いになれたのに、一週間も逢えない・・・・・
翌日からまた部活が始まり、練習漬けの毎日だった。
アイツからのメールはこれまでと違って、好きな気持ちが溢れるような内容だった。
《響に逢いたい、離れてるのが辛いんだ、後1週間も逢えないなんて・・・・・》
これまでを思うと、どれだけ我慢していたのかと心配になる程、甘いメールが来た。
何度読み返しても、胸がときめき早く逢いたくて堪らなくなる。
同じようなメールを書こうと思っても、照れ臭さとコミュ力不足でなんと書いたら良いのか、分からない。
自分で書いていて、その内容が照れくさくなって、送信する前に結局削除してしまう。
その繰り返しだった。
アイツの気持ちを考えれば、何でも良いから返事を送ろうと思っているのに、なかなか送れるようなメールが書けなかった。
かと言って、電話で直接言うのはもっと恥ずかしかった。
そのうちやっと一週間が過ぎて、今日アイツが帰ってくる。
部活が終わる頃には、部屋に居るはずだから今夜は一緒に晩御飯を食べようとメールが来ている。
早く逢いたくて堪らない、あの夜海でアイツが言ったことは、ほんとうだろうか・・・・・何だか今思うと夢だったような気もする。
朝まで砂浜で抱き合っていたことすら、夏の夜の夢のようで、早くアイツを抱きしめてキスしないと夢から覚めてしまうようで心配だった。
部活が終わると直ぐにマンションへ帰って、隣の部屋のチャイムを押した。
でも、まだ帰っていなかった。
自分の部屋でシャワーを浴びて、アイツからのメールを待った。
最初のコメントを投稿しよう!