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嫌いな同級生
冬眠していた感情が静かに目を覚ますように、自分の中でアイツへの気持ちがいつの間にか大きく育っていた。
アイツを一目見た時からいつもそうだった。
布木 侑星
アイツを目の前にするとなぜか緊張し言葉もうまく出てこなかった。
アイツが苦手で嫌いだった。
俺の中でアイツは大嫌いな同級生だった・・・・・
無意識に人は様々なものを好きか嫌いかに分けている。
食べ物や飲み物は勿論、ペットや動物、花や木などの植物さえ好き嫌いある。
そして当然、人にもその感情が働き、一目見て感じがいい人や、話しやすそうだと好印象を持つ人、気が合いそうな人がいる反面、話したわけでもないのに、イケすかない奴だと思ったり、苦手意識を持ったり、友達にはなれそうにないと感じる人もいる。
小学校で始めて布木 侑星を見た時が正にそれだった。
校門で母親に背中を押され門の中へ押し出されると、ベソベソと泣き出し母親の手を離さない。
しゃがみ込んだ母親が頬に手を当て、宥めすかしてようやく教室へ向かう。
其れが朝のアイツのルーティンだった・・・・・
そのくせ、教室ではニコニコと誰にでも優しく、男子にも女子にも人気だった。
まるで女の子のような可愛い声と色白な顔は柔らかそうに膨らみ、愛らしいという言葉はアイツのためにあると言っても良いほどの容姿だった。
だが、俺にとっては其れすらも気に入らなかった、男のくせに可愛いと言われて喜ぶ気がしれない。
先生からも生徒からも可愛がられ、無邪気に振る舞う姿がアイツの本当の姿だとは到底思えなかった。
あの愛らしい顔の裏側で意地の悪さや、嘘を隠しているはずだと思いこんでいた。
目が合うたびにイライラは募り、無視しようと思いながら、いつももどこかでアイツを眼の端に捉えていた。
当然アイツも俺の態度は分かっているはずなのに、其れでも笑顔を絶やさず俺を見る。
その顔がまた俺の神経を逆撫でした。それが分かっていながらやっているとしか思えなかった。
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