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月になりたい
木曜日は朝からソワソワしていた
白井さんはニヤニヤしていた
今日出るのよねと
変に大きな声で他の職員さんに
話したりしていた
久しぶりにランチに誘われたが
何だかバタバタ忙しくて
あまり話せないままに閉館時間に
新しく入った本の整理をしていたら
今日はもう、帰りなさいと
背中を押された ありがたいな
帰宅途中にいつも眺めていた
甘味屋さんであんみつを買ってみた
1つしか残ってなかったから
遠慮なく買おうとしたら
おまけだよと鯛焼きをくれた
晩御飯はこれで充分かなと
しかし、鯛焼きには牛乳だなと
久しぶりのコンビニに寄ってみた
もう店員さんは知らない人ばかりだ
私は3年前迄は帰宅途中には
必ずここに来ていたんだなと
いつも同じお弁当と翌日の朝のパンと
牛乳を買うだけだった
支払い金額も余り変わらない
店員さんと仲良く話す事もなく
淡々と生きていた3年前が
色鮮やかに蘇ってきた
月が綺麗な空を眺めて泣いた
私は彼のおかげで色が見える
穏やかでも笑顔のこぼれる
1人暮らしをこの3年で
初めても沢山経験したし
初恋も推し活も始めようとしてる
私の記憶の中の彼は
どれ程に成長してるんだろう?
違和感じゃなく成長なんだ
私も少しは成長したかな?
部屋に到着して
お風呂に入り。
今回はパジャマに着替えて
牛乳とあんみつと鯛焼きを
美味しく食べた
小さな幸福感に包まれた
甘いモノは正義だなと思った
いよいよ21時半だ
番組が始まるとまた音楽の世界に
引き込まれた
どの挑戦者さんも素晴らしい
不調で声が出なく不合格になる人や
緊張で声が震えても合格する人や
とても素敵なシンガーソングライターさんが
不合格になったり
彼を待ってるだけでなく
どの人にも共感もしたし
涙も出たりした
彼と同じアイドル派にも
好きな声の人が居た
オレンジ色のベストが良く似あっていた
もう1人私の涙を止めれなかった
女性シンガーソングライターさんが居た
彼女のオリジナルソングだ
字幕の歌詞を見ながら泣いた
どうせ あなたの恋人にはなれないけど
あなたのいない世界をおもうくらいなら
愛でないことを
未熟な気持ちの整理もつかないまま
似合わない気持ちをぶら下げて
あなたを眺める私が憎いです
これは、私だなと
声も殺さないで大声で泣いた
ラストの歌詞には
3年前の私が居た
どうして、私は心の中でまで
努力するのだろう
深く沈んだ
私の心だけが惨めになる
私は私自身で自分を閉じ込めていた
それを引き出してくれたのは
間違いなく彼なんだ
あの日桜並木の花吹雪の中
初めて見つけた煌めきの欠片だった
彼女の歌のように
あの輝く月になりたいと
強く思った。
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