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求と告と叶
帰宅して直ぐに
求からメッセージが来た
明日の午前11時半に品川の
有名なホテルのフロントでと
とにかく朝起きてから
バタバタ支度をした
ホテルのレストランなら
ジーパンはダメかなと
目に入ったのは
先々週に番組を観るのに着た
あの桜並木で彼を見かけた時の
花柄のワンピースにした
あの時はカーディガンを着てた
今日はもう初夏だから
スカーフだけを選んだ
約束の10分前には到着した
フロントの中央に求が居た
温かい笑顔で手をふり迎えてくれた
二度目だからどう挨拶したら?と
悩んでいたら前回と同じように
軽く抱きしめてくれて
来てくれてありがとうと
告は?と聞いたら
ちょっと目立つから
レストランで待ってるから
行こうかとなった
ホテルの最上階にある
和食のお店だった
僕も告も和食は久しぶりなんで
此処にしたんだと
二人は何処に住んでるの?と
思いながらついて行くと
店の奥にある個室に案内された
大きな窓から遠くに富士山が見える
素敵な個室だった
その窓際にかなり長身の男性が居た
求が名前を呼ぶと
告が振り向いた 私の中の
告は3歳のまんま
しばらく呆然と見つめてしまった
とても綺麗な顔立ちで
普通じゃない輝きがあった
人懐こい感じで
かなうちゃん?会いたかったと
求とは違う少し距離感のある
抱きしめるではない
ハグみたいな挨拶だった
とにかく3人でテーブルにと
求が椅子を引いてくれて
私は窓が見える側に座った
向かい側に求と告が
窓を背にして座るから
陽射しがまるで羽みたいに
彼等の背後に見えたから
少し微笑んだら 告に言われた
「やっぱり 大きい兄ちゃんが
言ってたまんまだ。笑うと
眼を閉じるんだね」
そんなこと初めて言われた
いや誰かと微笑みあって対峙する
そんな事あるわけ無かった
私は何をしていたんだろう
何から話すのか解らないと
思っていたら求が
とにかく今の僕らを自己紹介するねと
求はお父さんと暮らしていたから
お父さんの転勤で16歳からアメリカ在住で
大学生になる時帰国になるはずが
行きたい大学があるからと
1人アメリカに残り暮らしていたと
大学を出た後もアメリカ企業に就職し
去年独立して起業したと
今はアメリカと日本を行き来してると
そうかもう26歳だなと
頑張っているんだなと
その間告はずっとにこやかにしてた
告は笑いながら話し出した
Kpopとか聴かない?
僕の事知らないよね?
求がお前誰でも知ってると思うなよ!と
笑ってた
つまり 告は中学卒業したら
韓国の芸能事務所の練習生になり
今はグループで活動していると
結構売れてるんだよと笑ってた
私は最近オーディション番組見てる事と
図書館司書になる事と
最近ようやく楽しく暮らせる様に
なった事も話した
全部忘れたふりして
お花見切符も最近見たのと
財布に入れてる最初の1枚を見せた
2003年のだ
告は触って眺めて泣いていた
美味しいお肉を食べながら
大人3人で泣いていた
光の想い出はみんなそれぞれ
大切に、抱えていたんだ
私も忘れた振りだったのかも知れない
核心には触れないで
小さな頃の欠片を話してばかりだった
デザートが出て来た時に
告が突然立ち上がり私に謝りだした
「僕が大きい兄ちゃん殺した。」
私も求も驚いたけど
それだけは違うと声を大きくした
小さな3歳はずっと抱えていたのか
あんな悲しい事件を
告はお母さんと暮らしたが
ずっと夜になるとお酒に溺れ
告を責めていたらしい
あんたには記憶が無いのが許せないと
求も泣いていた
俺さえ居なければ告と母さんは
笑って暮らせると信じて居たのにと
告は辛すぎて中学生の時に
オーディションを受けて
僕は韓国に逃げた 母さんから逃げた
3人して泣きつかれた
私が初めて笑って話を切り替えた
私ね 今初恋なの 推し活するの
真っ直ぐ前向いて
眼も閉じないで宣言した
こんな、悲しいランチで終わりたくない
求も告も何にも悪くないから
遠くに見える富士山から雲が消えて
美しく見えた
3人で眺めようと2人の手を引いた
「で?告は何てグループなの
早速聴いてみたいや」
告は笑って派手な紙袋をくれた
何枚かのCDやDVDが入っていた
求からはもっと派手なエコバッグを
中には何だか不思議な
キャラクターのグッズが入っていた
君たちは一体何者?と笑ったら
告が叫んだ
「ほら!今眼を閉じたよ」
3人してまた笑った
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