興味は共感になる?

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興味は共感になる?

082a0ab1-acfe-4035-9565-655642bd6d34 どれ程に気になろうとも 彼の名前さえ知らない 知っているのは もうすぐ韓国に行く事 だからと言って何か行動を おこせる程の熱量も無く 何も変わらない日々をこなしていた 初夏の薫りがする頃には 館内で彼を探すのが上手になった 立ち止まり彼を眺めて 深呼吸すると少し身体が軽くなる どんな栄養素よりも 私には心の栄養になっていた 彼も決して本を借りない その日限られた時間で読める 何かを読んでた 最近はハングルの勉強かな 旅の本とかも眺めていた いよいよ行ってしまうのかな? 少し寂しい気持ちに驚いていた ある日彼は居なかったから 彼がこないだ読んでいた ソウルのガイドブックを読みだした 海外にも行ってないなと思いながら パスポートも取らなきゃとか 新鮮な気持ちで小さなノートに あれこれ書きこんでいた 食べ物が美味しそうだなとか 歴史は今度ちゃんと学びたいとか そんな時 あの優しい声が花びらみたいに 降ってきた 「あの その本急ぎで読みたいですか?  少し読みたい部分があるので  直ぐ終わりますから見せてもらって  良いですか?」 本を閉じて見上げたら 美しい笑顔が眩しかった 黙って本を差し出した 立ち上がり移動しようとしたら 柔らかな暖かい春の日差しみたいな 手が肩に触れてきた 「待ってください直ぐだから」 彼は何処かの場所の住所を 書き写していた 日差しの輝きと彼の輝きが混ざり 一枚の絵画みたいに美しかった 私はどうしたんだろう こんなに人に興味を持つなんて 突然本が差し出された 「韓国に行くんですか?僕は来週から  ソウルに住むんです。色々調べてます  結構このガイドブック役にたちます」 笑顔を見つめてしまった ありがとうとお辞儀をした 彼は爽やかな薫りを残して 風みたいに消えて行った その日初めて本を借りた 司書さんが微笑んでいた 私?何してるんだろう 韓国に行く気? とにかく私の中の何かが 弾けた瞬間だった
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