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雌蛇ヶ池
桜が散り始めようとしている春のひととき、澄んだ水が清々しい雌蛇ヶ池。池の中はいつものように騒がしかった。
「ちょっと聞いてください。ジャガ神さま、大ニュースですよ」
「俺様が雌蛇ヶ池の主、ジャガ神じゃが〜っ。で、ニュースって何じゃが?」
「この池が埋め立てられて人間たちの住宅地になるらしいです!」
「えっ、聞いてないじゃが〜」
「極秘プロジェクトで池の住民は誰も知りません」
「俺様たちの居場所がなくなってしまうじゃが〜」
「それなら心配無用。池に注がれている秘密の滝からもっと上流のオシャレ池に行けるという噂です。しかも滝を登ると竜になれる伝説もあるとかないとか!」
ジャガ神の両目は出目金のように大きくなり、キラキラと輝いていた。
「滝を登ると竜になるって、まるで鯉みたいな話じゃが〜」
「もしも登れたら、ジャガ神さまもきっと竜になれます」
「なんだかカッコイイじゃが〜」
ジャガ神は興奮のあまり、ウニョウニョと身をくねって喜びを表現していた。
勝手に神と名乗り、ちょっと性格がこじれている雌蛇ヶ池のジャガ神と腐れ縁の付き人。彼らは雌蛇ヶ池に住む鮒である。
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