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4.七色の贈り物
「真白の絵さ……なかなか進んでないね?」
放課後の美術室。葵くんがキャンバスの周りをうろついて言う……その通り!
美術室で描くのも今年が最後。大切にして過ごすつもりが、葵くんに侵入されてから落ち着いていられないから!
バイトまでソファで寝るって、一度眠りに落ちるとなかなか起きない。少し揺すったり、手を叩いたぐらいじゃ目を覚まさないし。
起こしてとお願いされてないけれど、遅刻するんじゃない?と思うほどにガチな昼寝をしている。だから毎回スマホのアラームを止めるのも私で、代わりに私が葵くんの目覚まし時計係になっていた。
さっきも英語の授業中・・・『グ〜…』
本気のイビキが背後から聞こえて、チラッと後ろを見てみると葵くんは机に伏して居眠り。
なんだか周りから飛んでくる視線が痛い。
私じゃないのに。『グ〜… スゥ〜』
先生と目が合うと無言の圧力を感じて…
まるでしっかり面倒を見なさい、という目線に仕方がないと私は苦肉の策に出る。
一発で起こすイイ方法。深く椅子に座って背筋を伸ばすと、先生が板書する時を見計らって…
『ゴッ!』『ってぇ!』
首を反らして後頭部で寝ている葵くんの頭に向かって頭突きした。鈍い音と痛みが走る。
『痛て〜。真白、何かした?』
フリフリと首を横に振る。どうやら目覚めはイイみたい。私も頭がジンジンしてるけど雷落としは成功♪
こんな感じで馬鹿げた事ばかりしているから、私の絵は一向に進まないのだ。
「…今度山に登って、模写してくる」
「へぇ、山かぁ。……よしっ俺も行く!」
「えっ!?」
何で葵くんはいつも予想外な事を言い出すのか、、、
期末前の7月初め、朝9時大原山駅で待ち合わせ。
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