4.七色の贈り物

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「起こせばよかったのに〜」  夕焼けのオレンジ色に染まるバス乗場。  (あおい)くんは寝起き顔で嘆き声。私が降りるバス停を通り越して終点の田原駅まで来たからだ。 「よく寝てたから。同じバスですぐ帰れる」 「そお?じゃあ、夏休みの為に期末頑張るか〜。絵も完成したら教えて」 「うん」  私はイヤホンを葵くんに返すと降りたバスに再び乗車した。チラリと車窓から改札に向かう葵くんの後姿をぽうっと見送って、また同じ座席に腰を下ろすと夢見心地にスマホの写真を眺める。  あのとき天がくれた贈り物はふたりで分け合った。虹をはんぶんこしたのだ。 『デカくて入んない。真白(ましろ)もスマホ!早く早く、消えちゃう!こうやって…半分ずつ。2つの画面におさめれば……  ほら!な?』  私達のスマホを宙に並べて、その奇跡の瞬間を写し撮った――――。  それから頂上を満喫し下山。絶好調な顔色の葵くんはバスで一緒に帰ると言い出した。純平(じゅんぺい)に会いに行くつもりらしい。田原駅行きのバスに乗り後部座席に並んで座った。  出発して純平が不在とわかると葵くんはがっかり。『暇だぁ』背伸びの後にイヤホンの片方を私によこして、殺風景な窓の流れとバスの揺れに身を任せていると、暫くして……葵くんは眠ってしまったのだ。  景色は青空が暖かさに包まれ始めていた。  葵くん… ナイショにしてごめんなさい。  眠りに落ちた葵くんが私の肩に寄りかかってきて……ずっとスヤスヤ寝ていたの。  途中で乗車してきた男の子に『ラブラブだね』って言われて凄く恥ずかしくて。  それでも… 起こす気にはなれなかった。  だって眠りについたらなかなか起きないでしょう?……嘘です。  葵くんが桜色のオーラをふわふわ出していたから――――  疲れて眠る澄んだ青色に、その優しい春色を溶け込ませ…  私がこのまま葵くんのオーラに包まれていたかった。だから、起こさなかったの。  今ならわかる気がする。青色と春色のクオリアは青春の感じ、ではなくて…  まだ私が知らない、恋の…  初恋の感じ、、、かもしれない。  この切なさと儚さの気持ちが歯痒くて、熱っぽい片側がいつまでも温もりを放さなかった。
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