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約束の日、ちょうど校門を入ったら花壇の花達に惹き寄せられて。ピンク色のタチアオイが空高く煌々と咲き誇っていた。
私は近くにくっついて少し見上げるようにして観察。
タチアオイは縦に真っすぐ伸びる茎にたくさん蕾をつける。下からハイビスカスに似た花を咲かせながら伸びていき、夏の間に空を目指してもうてっぺんまで開花した。
葵くんと同じ身長で、葵くんの名前の花。
「わっ!?」
突然、空を斬って重低音の羽音がする。
クマバチだ。羽をバチバチ轟かしその大きな音と、セミ程の体格にビックリするけれど……普通なら。
ゆらゆら青色のオーラを撒き散らしてアオイの花の周りを飛んでいる。
お腹を空かせて花の蜜を吸いに来たんだ。胴体に黄色のもこもこなベストを着てオシャレな子…
私は何気なく青いオーラに手をかざしてみた。
その時、ガシャン!と何か後ろの方で音がして振り返って見ると……
「真白!」
葵くんが私を呼びながら決死の表情で駆けてきて――――!?
勢いよく私に、ばっと覆い被さる。
パシッと高い音がしてクマバチのオーラに触れていた手を強く捕まれると、強引なちからで体ごと伏せられた。
私はされるがまましゃがみ込んで小さく…
とても小さく丸まった。
葵くんの腕の中で… すっぽりと。
葵くんの胸に… ぴったりと。
ドクン ドクン
葵くんの心臓の音が――――耳から直接聞こえる!!
アツイ体温もしっとり感も……苦しいっ!
息、できない。
「刺されてない!?」
葵くんは私から剥がれると真っ先に私の捕まえた右手を見て、確認するように私の顔を捉えた。
コ、クン…。私はゆっくり頷く。
「あ、焦ったぁ」
葵くんはへなへなと地面に尻もちをついた。
「何あのでっけぇ蜂!?観察も大概にして!
絵描けなくなったらどうすんの!?」
険しい、から緩んで…
百面相みたいにコロコロ表情を変える葵くんは、また眉を寄せた形相で丸いダンゴムシのままの私に叱りつけるよう。
「あ、あの子は花の蜜を吸いに来ただけで…」
「何それ?…あ、眼力か。はぁ〜、
ホント田舎の虫デカすぎだって〜。やべ!チャリが〜。パンも潰れたかも!?」
葵くんはさっと立ち上がり校門で倒れたままの自転車に駆け戻った。
リュックを揺らす葵くんの後ろ姿は青色とキラキラが混ざり合っていた。
とびきり急いで… 私を庇いに…
走ってきてくれたんだね。
自分の胸に両手を当てて、伝染した葵くんのドキドキを静める。
父と娘みたいな、、、
私って… そうゆう対象なのかな?
柚子と若菜がお姉さんぽく振舞うのに似ていた気がして、なぜかちょっぴり心がチクチクした。
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