5.夏色のときめき

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 教室に寄ってから美術室行くから!と再度合流した(あおい)くんに完成したキャンバスを見せると、溜息まじりにじーっと眺めてから首を傾げる。 「おんなじの見てたのに……俺が記憶した虹より100倍は光ってる。虹の天の川だ。  …サインはしないの?」 「サイン?裏にタイトルと名前はいつも書いて応募する…」 「裏?どれ……あぁ。  幸せの証、大井田原(おおいたわら)真白(ましろ)。幸せね…」  葵くんは裏側を覗いて、愛おしそうな目で幸せの意味を確かめているかに見えた。  あんまりに静寂さを纏うので、何かあったのか?尋ねようとすると「真白は夏休み何してた?」誤魔化すみたいに聞かれた。  私の夏休みは絵を描く登校以外はオープンキャンパスに行ったり、若菜(わかな)柚子(ゆず)とたまに会ったり。  報告に頷くと葵くんはニコニコしながらポケットから出した物を私に見せる。 「ジャ~ン。俺は原付の免許取ってバイトでデリバリー担当してた。時給アップ!」  目の前に差し出されたのは葵くんの免許証。初めて見たので釘付けで観察。 「……葵くん?  誕生日7月2日、山登りした日だよね?」 「そうそう!あの日誕生日でさぁ。  ちょうど18になるし成人だし、何か特別な事しようと思って」 「・・・・・言って!!?」  葵くんはケラケラ笑う。私の顔が面白いって。  何も出来なかった事を悔んでいると、なだめるように優しい表情を向ける。 「いいんだよ…。  じゃあ、俺に絵書いてくれる?」  葵くんはスマホでお絵描きアプリをダウンロードして私に渡す。  何を書けば?との問いに、何でも。  初めて描く画面上は難しいが指の腹に全集中。プレゼントといえば花……元気が出る花を……黙々と指先を働かせる。 「やっぱ真白の誕生日は冬?雪の日だったとか」 「…うん」 「何かお祝いしないとな」 「…いい」  葵くんはスマホと私を順番に見て吹く。楽しい?と聞くのでウンウンと首で答えた。 「…向日葵?」 「はい。出来た」  太陽に向かってサンサンと咲いている向日葵。葵くんにピッタリだと思った。  「サンキュー。アイコンにしよう」葵くんはその向日葵も愛おしそうに見つめていた。
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