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「純平に聞いたんだよ。
部活紹介で出たろ?ぼっちの部活ってウケてたら、純平が名字同じで近所って」
純平は幼馴染でお調子者だからベラベラ話したんだろうと推測した。ずっと同中は皆一緒のクラスだったけど、純平だけ3年時に受験科目の都合で理系に移ったのだ。
ついでにこの彼も理系1組の在席だと回答に含まれていた。
「大井田原ってタハラじゃなくてタワラだってね。大井と田原も別に地名あるってめちゃややこしいな。…で下の名前なんだっけ?」
「…真白」
「大井田原まひろ、な。覚えたっ」
彼は満足気に頬を上げた。
しっかり目を見て話をする人。私をその青髪の奥から直視で捕まえている。浴びる視線がくすぐったいけれど……負けじと私も観察して彼を脳裏にスケッチしてみる。
二重で睫毛は長く涙袋に薄っすらクマ。鼻筋は通っていて顎のラインは角々しくなくて滑らか。首は細めで華奢だけれど、喉元に鎖骨そして大きな手は骨張って男子らしく……髪もキメているから非常に整ったモデル像だ。
「じゃあ俺行くわ。一応登校したから出席交渉すっかな」
目先の美術モデルは床に置いてあったリュックを掴むとスタスタ去ろうとする。
「え?ちょ、このソファは!?」
「置いといて。いつも応接室で寝てたんだけど校長にバレちゃって。また寝に来るから」
いろいろ問題点が気になるけど、肝心な回答をまだ得ていない。
「あの、名前!」
「……3年1組、神崎 葵」
「あおい!?」
「そう、それから、ソファも髪の毛も!
俺たちだけの秘密、な?」
最後に見せた振り向きざまの不敵な笑みは、ちょっぴり眩しくて私は何度も目をパチパチさせる。
私たちだけの 秘密 。
キラン!キラン!
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