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2話 もしかして霊の仕業?
「母さん!」
「何さ、大きな声で、珍しい」
そう言われ、
「あ、ごめん」
「いいけどどうしたの?」
この後に及んで言おうか言うまいか迷った。
母は不思議そうな顔をしている。
「いや、やっぱりいいや」
「何かあったの? 変な子ねえ」
「気が向いたら言うよ」
愛しの妹の純子に言ってみようかな。もしかしたら分かって貰えるかもしれない。夜にでも純子に聞いてもらおう。
母が僕の部屋に来た。時刻は午後6時過ぎ。
「ちょっと気になったんだけどね、最近、あんた仕事から帰って来るの早くない?」
隠すつもりはないが、言おうとは思ってなかった。でも、気付かれたからには言うしかない。
「最近調子悪くてさ。それで、早めに上がらせて貰ってる」
「そうなんだ。どういうふうに具合い悪いの?」
「うーん、さっき話そうとしてやめた話しなんだけど……声が聞えるのさ」
「声?」
「うん、誰のかはわからないけど、謎の声」
「え!? それって霊とかじゃなく?」
「もしかしたらそうかもしれない」
母は表情を歪めた。
「嫌ねえ、気持ち悪い……」
やっぱり受け入れて貰えなかった。言わなければ良かった。
「純子にも話してみるよ」
母は俯いてしまい、
「あの子だってきっと怖がると思うよ」
「やっぱりそうだよなあ……、どうしよう」
母は何かを考えているようだ。
「調子悪いのは何で?」
「わからないよ」
「声が聞える、という事も含めて病院で診てもらったらは? 調子も悪いんだし」
「そうだね、希死念慮もあるし」
「きしねんりょ? 何それ」
僕はあまり言いたくなかったが、つい口に出してしまった。気持ちのはけ口が欲しかったのだと思う。
「……死にたくなる気持ち」
「え! そうなの!? それは病院に行くべきだわ! 今日はもう診察やってないから、明日とりあえず総合病院に行ってごらん。仕事は休まないといけないけどね」
母の話しは妙に納得がいった。なので、明日病院に行く事にした。
部長に連絡して休む旨の話しを伝えて、了解を得た。
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