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6話 一目惚れ?
約1ヶ月後。薬が効いてきたのか調子が幾分良くなってきた。でも、主治医から衝撃の一言を言われた。それは何かと言うと、
「統合失調症は寛かいはするけど、完治はしないよ」と。
寛かいってなんだろう? と思い訊いてみた。すると、
「症状が出なくなることだよ」
そうなんだ、じゃあ、それを目指そう。そして、原因も不明な病気らしい。
厄介な病気にかかってしまった。僕の未来はどうなるのだろう。結婚はしたいな。今、彼女はいないけれど。もっと病気が良くなったら友達に紹介してもらおうかな。出来れば、女性は健常者がいいが、僕に病気があるからそうもいかないかもしれない。でも、最初から病気がある、と言う必要もないかもしれない。仲良くなって、交際するまでに発展したら、公表してもいいだろう。
こんな僕にでも、女友達は数人いる。その中で好みのタイプの友達がいる。
名前は今野真知子といい、21歳で僕より1歳下だ。出逢いは職場。僕が高校卒業してから就職し、そこで僕が入社した次の年に事務員として入った。今野さんは可愛いし優しいから、人気がある。一目惚れ、と言っても過言ではない。それくらい可愛い。仕事上、電話は使うので電話番号とメールアドレスは交換してある。メールを送ってみるかな。自分の部屋にいる僕は、テーブルの上に上がっているスマホを手に取り、メールを送った。
<こんばんは。久しぶりだね。何してた? 僕は事情があって仕事を休んでるよ>
時刻は20時過ぎ。一人暮らしをしていると以前話した時に言っていた。今野さんのアパートに行ってみたいな。でも、この格好じゃ行けない。風呂にも入っていない、歯磨きもしていない、気分は暗い。全ては面倒だからやっていない。親は何も言わないが、きっと臭うだろう。この姿じゃ会えない。今野さんに彼氏はいるのだろうか。可愛いからいるかもしれない。30分くらい経過してからメールが来た。早速、開いてみると相手は今野真知子さんからだ。嬉しい。返信はないかと思っていたから尚更だ。
<こんばんは! お疲れさまです。今、実家に来ていて家族でテレビを観ていました。お仕事休んでますけど体調でも悪いんですか?>
さすがは女の子。勘が鋭い。僕はすぐにメールを送った。
<よくわかったね。流石だわ。一応、病院に行って自宅療養してるよ>
次の今野さんからのメールはすぐに来た。
<やっぱりそうなんですね。大丈夫ですか? お話くらいなら聞きますよ。何もできませんが>
<ありがとう。調子の良い日に連絡するね。ところで、今野さんには彼氏いるの?>
次のメールは暫く来なかった。質問した内容がまずかったかな。
メールが来たのは21時を回っていた。
<それはプライベートな話しなので内緒です、すみません>
何だ、内緒かぁ。てことは、彼氏はいるということかな。
<いや、ごめん。謝らないで。確かにプライベートな話しだよね。謝るのは僕の方だわ>
<まあ、それはさておき。川村さん、仕事辞めないですよね?>
<うん、辞めないよ。辞めろと言われない限り>
<ですよね、良かった>
<え? 良かった? 何で? 嬉しいんだけど>
<会社で心を開けるのは川村さんくらいだから>
<え、でも、会社の連中と楽しそうに話してるじゃん>
<うーん……そうなんですけど、ぶっちゃけ皆さんの話しに合わせているだけなんですよ>
<マジ? そうなんだ。じゃあ、僕も?>
<いえ、川村さんは別です。信用できます>
<そうかぁ、それは嬉しい話し>
信用しているなら、なぜ、彼氏がいるか暴露してくれないのだろう。いくらプライベートな話しあっても。まあ、仕方ない。無理強いは出来ないから。例え知ったところでどうにかなるわけではないから。だから、知らなくてもいい。負け惜しみではない。
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