最終話 家族の言葉

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最終話 家族の言葉

 僕の妹の川村純子は大学生。僕とは違ってしっかりしている。そんな妹からある物を貰った。見てみると「ピアサポーターになろう」という本だ。ピアサポーター? 少し読んでみると患者が患者を支える、というような事が書いてあった。 「お兄ちゃんのかかってる精神科で調べてみたら本に載っているようなことやってるみたいだよ」  そうなんだ、妹は僕の支えになっている。でも妹は健常者。支えとは精神的な支えのことだろうか。もっと読み進めないと分からないな。  それから僕は一気に読んだ。なるほど、患者が患者を助ける。例えば、一緒に買い物に行ったり、悩みを聞いたり、バスの乗り方を一緒に調べてみたりと、お互いに高めることも含むらしい。精神疾患や依存症やうつ病など障がいのある人自身が同じ障害のある人を助ける活動している人のことをピアサポータ―というみたい。  僕に出来るだろうか。1つ思ったのは、ピアサポータ―をするにしても、もっと回復してからじゃないと無理じゃないだろうか。明日、受診日だから主治医に相談してみよう。  疑問に思っていることがある。それは僕の将来の事。今は親がいるから生活 出来るけれど、将来、親がいなくなったらどうやって生活していけばいいのだろう。それも主治医に話してみようと思っている。病気が寛かいしたらフルタイムで仕事できるだろうか。不安が付きまとう。  まずは手っ取り早く両親に話してみることにした。居間に両親と妹がいたのでソファに座っている父と妹、キッチンで調理をしている母に早速、打ち明けた。 「僕、不安に思っている事があるんだけど」  父が喋った。 「何だ? 不安な事って」 「僕さ、病気あるから将来病気が良くなってフルタイムで働けるかという不安だよ」  妹が口を挟んだ。 「まだまだ先の話しじゃない?」 「そうだけど、いずれ辿る道じゃん」  僕がそう言うと、父はこう言った。 「先のことはどうなるかわからんぞ。もしかしたら親より先に一郎がいなくなるかもしれないだろ? あらゆる可能性があるから、今はまだ考える必要はないと思うぞ」  次は母が話しだした。 「まあ、確かにまだ早いかもしれないけれど、先の事を考えておくのは必要なことかもしれないね」  僕は母の意見に同調した。 「だよね、僕もそう思う」  父は、こう言った。 「一郎の不安は、病的なものじゃないよな。だから、病気が良くなればお前の気持ち次第でフルタイムでも働けるだろ」    僕の返答はこうだ。 「まあ、焦る必要はないし、自分を信じて生活していこうかな。フルタイムも出来ると」 「そうだ! その意気だ!」  と父は言ってくれた。 「まずは病気を良くすることが大事だってことだね」  妹の純子は言った。妹のことは大好きだからそう言ってくれると嬉しい。 「先の事を考える、と言っても限度があるからね」  母はそう言った。  家族はそれぞれの僕のためになることを言ってくれた。ありがたい。今後も焦らずじっくり過ごしていこうと思う。無理はなるべくしないように。無理は 体に毒だから。                                  了
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