俺の栄養素2

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「変なことって何スか?」  多分あの指へのキスのことを言ってるんだろう、空惚けて意地悪く聞いてやれば、目元まで赤くして「何でもねぇよ!」とそっぽを向いてしまった。 (少しは意識してくれてるのかな)  本当はもっと揶揄ってやりたいけれど折角の約束(?)が反故になっては意味が無い。俺は顔の横で両手を広げて降参のポーズをした。 「何もしませんって。俺は神林さんと一緒にメシが食えればそれで良いんスから」 「…………」  ムスっと唇が曲がる。神林さんの頭の中は「美味いただ酒」と「信用ならない俺」の間でふらふら揺れているに違いない。 「決まりっスね」  また答えを待たずに決めてやる。この人に有効なのはこういうタイミングの良い強めの押し(、、)なのだ。 「ばっ! まだ行くとは言ってねぇだろ!」 「奢りますから」  ね、と首を傾げれば、チッと舌打ちが返ってくる。
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