俺の栄養素2

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「ビール寄越せ」  屈んだ俺の後ろから伸ばされた手に缶を一つ渡してやると「サンキュ」と言ってスタスタと部屋に入っていってしまう。俺がチキン南蛮をレンジに掛け始めたところで、部屋からプシュ! と勢い良く炭酸が抜ける音がした。 「美味っ」 「あっ! ちょっと何で先に呑んでるんスか!」  慌てて部屋を覗くと神林さんは俺のベッドに腰掛け、一人で缶を傾けていた。スーツの上着もちゃんとカーテンレールにぶら下がっていたハンガーに掛けている。 「良いだろ、別に」 「良く無いっスよ。カンパイするもんでしょ、普通」 「カンパイぐれぇ、後でいくらでもやってやるよ」  そう言って二口目を呑む。サラサラとした前髪が昼間よりも多く額に落ちている。色の白い肌と薄い唇と細い手首と長い指。どれもこれもいつも見ている神林さんだし、どれもこれも見たことの無い神林さんだ。 (このままこの部屋に閉じ込めてやろうかな)  馬鹿みたいな、でも大真面目な考えに後ろ頭をボリボリと掻く。
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