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神林さんはハンバーグの付け合わせに付いていたポテトを咥えながら「テレビ見てるかな」と言う。
「テレビってドラマとか?」
「いや、お笑い。なーんも考えずに流しておくには丁度良いだろ」
「じゃあ見てないってことじゃないっスか」
「そうとも言う」
アハハと笑ってまたビールを呷る。テーブルに置いた缶から甲高い音がして、「次だな」と神林さんは立ち上がった。同じ男とは思えない薄い身体が冷蔵庫に向かう。
「俺の分もお願いします。何でも良いんで」
後ろ姿に声を掛ければ「翔太のくせに先輩を使うなんて百年早ぇんだよ」と悪態が返ってくる。
「ついでなんだから良いじゃないですか」
「馬ぁ鹿」
そんな風に文句を言いながらも「ほらよ」とちゃんと二缶持って帰ってくるあたり、やっぱり優しい人なのである。
神林さんは再びベッドに腰掛けて、プシュッとプルタブを引いた。本当は隣に腰掛けたかったけれどそれはそれでキモがられそうな気がして、俺はテーブルを挟んだ向かい側の床に座っている。細いスーツの脚と軽く腕まくりをした白いワイシャツと俺の好きな童顔が正面にあって、フローリングで尻が痛いことを除けばなかなかの特等席だ。
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