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「何だよ。言えっつってんだろ」
「じゃあ言いますけど」
神林さんは、おう、と挑戦的に頷いた。
「俺が一番ふさわしいと思うんで」
「ふさわしい? 何の話だよ」
「神林さんの恋人」
大きく見開いた目からは俺の言葉を理解できないっていうか、理解したくないという気持ちがありありと滲み出ていた。
「お、俺の」
「恋人」
「こ、恋人っ?」
そうですと大きく頷くと、神林さんは途端に目元を真っ赤にして、手にしていた缶を叩きつけるようにしてテーブルに置いた。その下には運悪く取り皿に載せられた割り箸があり、缶の勢いに負けたそれはぶわりと宙を舞う。
「ばっ! 馬鹿が。却下だ却下!」
「何でっスか。前言ったじゃないスか。俺神林さんのこと好きだって」
——神林さんだから好きなんです。神林俊之だから好きなんです。
あの時伝えた言葉。神林さんはどう思ったか分からないけれど、あれは俺の本当の気持ち。ずっとずっと心の中に溜め込んで、ぐってりこってりどろんどろんに発酵して、本人にぶつける以外に無くなった超重量級の俺の想い。
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