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確かに言ってたけどよ……とブツブツ呟く神林さんに、俺は伝家の宝刀を抜く。
「じゃ、決まりで!」
「なっ! まだ良いなんて言ってねぇよ!」
「前にも言ったじゃないですか。拒否されたって俺の思いは変わりませんって」
うぐと言葉を飲み込んで、茶色の瞳が俺の顔を睨んだ。俺は顎を持ち上げ畳みかける。
「よく言うじゃないっスか。やる前から諦めるのは一番ダメだって。諦めるのはやってからだって。そうっスよね」
「そう……だけどよ……」
「じゃやってみましょう。今日から俺たち、恋人同士です」
にっこりと歯を見せれば、「一週間もすれば諦めるだろ……」とか独りでブツブツ呟いている。何だかんだ言ってるくせに取り敢えず受け入れる方向に進んでいる神林さんの思考が愛おしくて堪らない。
(一週間で諦める訳無いじゃないですか。寧ろ神林さんの方が一週間で俺の虜になる予定なんですから)
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