俺の栄養素2

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 神林さんは唇を尖らせて、つんと横を向いてしまった。白い喉も、そこから続く鎖骨のラインもほんのりと赤く上気していて、ついさっきしたばかりの約束も反故にして、これ以上のことをしたくなる。夢ではない本物の神林さんはどんな声を上げるのか。どんな風に乱れるのか。一度気になったら下半身が疼いて仕方が無い。 「寄越せ」  横を向いたままの神林さんが短く呟いた。 「寄越せ?」 「箸だよ、箸。新しい奴。さっきすっ飛んでっただろうが」  自分がやったんじゃないっスかと返事をしながらも立ち上がる。さっきお代わりを持ってきてくれた優しい先輩(こいびと)に、箸ぐらいいくらでも持っていってあげよう。 「お代わりもしますか?」 「まだ良い」 「分かったっス」  俺は戸棚から割り箸を一膳取り出した。テレビから笑い声が響いている。人の気配のする部屋はなんて心地が良いんだろう。 (それが好きな人なら尚更だろ)  俺はキッチンでほくそ笑む。  二人の関係はまだ始まったばかりだ。 了
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