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「卵狩り?」
いつも通り依頼書に目を通しながら首を傾げる。相変わらずE級のままだけど、どんなランクでも依頼は後を絶たない。
「鳥系の魔物から卵を回収して納品する依頼だね。鳥系ならなんでもいいけれど、強い魔物程価値は上がる」
「そんな依頼もあるんだな。でも、鳥系っていったらグリフォンとかハーピーだろ。俺には荷が重すぎるよ。それに、卵ってなにに使うんだ?」
「料理や工芸品にも使われるし、装備を作るために殻を使用することもあるんだよ。不安ならウェアウルフの討伐依頼はどうかな。丁度よさそうだ」
確かにウェアウルフならダリウスと一緒に行けば苦戦せずに倒せそうだ。剣の練習もしたかったから、この依頼を受けることにした。
「ウェアウルフですか……」
「どうかしたの?」
アリスちゃんに依頼書を手渡すと、渋い顔をされてしまった。なにか、問題でもあるんだろうか。俺のランクじゃ受けられないとか?
再度確認してみる。ちゃんとE級以上と書かれてあった。
「こちらの依頼を受けた方が帰らないという事件が二度ほど起きていまして……。C級以上にあげるかどうか話し合いが行われていたところだったんですよ」
「じゃあ、俺は受けられないってことか……」
「いいえ。まだ変更はされていませんので受けることは出来ます。少しお待ちください」
カウンターの奥にある扉の中へ入っていったアリスちゃんを目で追う。
なんだかギルド自体ピリピリしている様子があるのは気のせいなんだろうか。
「なあ、最近なんか雰囲気おかしいよな」
「魔物の異常行動が目立ってきているからだろうね。S級冒険者を集めて調査に当たっている最中なんだよ」
「そういや、リアムも忙しそうにしてたよな。ダリウスは調査しなくていいのか?」
ダリウスもこの間ギルドに呼ばれていたし、S級冒険者なんだから俺に付き合って依頼を受けてる暇なんてないんじゃないか?
「俺の任務はツバサの傍にいることだからね」
「それって、お前が俺の傍にいたいだけなんじゃないのか」
「バレてしまったかい」
「バレバレだろ」
そもそも、隠す気がないよな。
ダリウスはこんな感じだから、ギルドの人も大変だろう。
「お待たせしました」
アリスちゃんが戻ってきて、依頼書を手渡してくれる。
「ギルド長に確認したところ、ダリウスさんと一緒なら依頼を受けることを許可するそうです。それと同時に、ダリウスさんには現場の調査を行ってきて欲しいということでした。もちろん調査報酬はご用意させていただきます」
「わかった」
ダリウスが了承してくれたから、依頼を受けられることになった。
大変そうだけど、不安はない。ダリウスが居てくれるからな。
今回は慎重に行動しようという話でまとまり、物資を調達して、しっかりとルートを決めてから出発することになった。
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