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秘書が決まった翌月。繁忙期だけ来ていた派遣の女子社員とキスているところをいつも私にキスしていた非常階段の一番上のところで偶然見かけてしまった。
そこは柱があって死角になっている。少し斜めに上って見ないと見えない。つい、いつもの癖で彼がいるかもしれないと覗いたのが悪かった。同じ部署だったが、丁度秘書としてフロアにいなくなることも多かったのでお互い大人の対応をした。
「悟。どこへ行くの?なんか疲れた顔してるわね……」
びっくりしたように私を見る。
「おまえ、相変わらず鋭いな。ちょっと一服したくて、下のコンビニへ買い物に行くところだ」
「今日は木村さん見ないけど来てないの?彼女、正社員になるかもしれないんでしょ?」
「……知らねえよ。あいつとはもう終わった」
「は?」
「まあ、いいだろ。どこ行くんだ?地下?」
エレベーターが来た。
「そう」
彼がエレベーターを開けてくれている。ガラガラとカートを引いて入れた。
「……聞かないんだな?どうして別れたかって」
「聞いて欲しいの?悪いけど、興味ない」
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