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第14章 発見
大火が収束した後、消防組や警察は残り火の確認と、逃げ遅れた町民の捜索を行っていた。その時だった。南町から三春城址に続くお城坂の途中で惣吉の死体が発見された。
それは火事による焼死ではなかった。惣吉は顔面を固い石のようなもので激しく殴打されていた。そしてそれによる頭がい骨陥没が死因だった。そこで捜索はゆきとゆきを連れ出した惣吉の友人とみられる男に絞られた。理由はわからなかったが、惣吉とその惣吉の友人が仲たがいをした結果、惣吉がその男に撲殺されたのだろうということになった。そして心配されたのはゆきの行方だった。ゆきはいまどこにいるのか、惣吉の友人に連れ回されているのではないかとか、既に殺されているのではないかと推測されていた。
「僕、見たんだ」
ところがそれは1人の少年の証言で覆された。その少年とは傳重だった。彼はゆきと男が仲良く一緒にいるところを目撃したというのだ。そこで三春警察に惣吉の父である大内、ゆきの父親、そして傳重が呼び出されることになった。
「あの人は惣吉さんの知り合いじゃありませんよ」
「では誰なんだ?」
「常葉の影山さんと言ってました」
「影山?」
「はい」
「ではゆきさんの親戚の方ですか?」
しかしそれにはゆきの父親は首を横に振った。
「すると関係はないということですね」
「はい。同じ影山でもうちの親戚筋ではありません」
「その影山さんは重治という名前です」
「すると影山重治が名前か」
三春警察署長がそう言ってゆきの父親を見たが、やはり首を横に振るだけだった。
「その人はゆきさんと親しく話をしてました」
「え?」
「それから昭進堂さんとも知り合いのようでした」
傳重の証言で、その場に高橋が呼ばれることになった。それで仕方なく高橋は重治の素性と、ゆきに紹介したいきさつを話した。
「ではその重治という男がゆきを連れ出したのはどういう理由なのだろうか」
「もしかしたら滝桜を見に行ったのかもしれません」
「滝桜を?」
「ええ。私とゆきさん、それからその重治さんの3人でゆきさんの大叔母さんのお宅に行く前に、今度は3人で滝桜を見に来ようという話をしました。しかし具体的にいつという約束はしていませんでしたが」
「滝桜は大火の原因になった南風で一気に開花したという話を聞いている。それで2人が滝桜を見に行ったということかな?」
高橋、ゆき、重治の3人が一緒に行動していた話を訝しげに聞いていた大内がそこでそう発言した。
「あ、でもやっぱりそれは無いと思います。3人で行こうと約束したことを反故にするようなゆきさんではないので」
それで高橋が2人をかばうような発言をした。
「それはわからんだろう。ゆきさんだって若いおなごだ。昭進堂さんが抜け駆けをされたのかもしれないですぞ」
「うちの娘はそんなふしだらな娘ではありませんぞ」
高橋の言葉に悪意ある反応をした大内にゆきの父親が反論した。
「まあまあ、ここでそんなことを言い合っても何も始まりません。それよりもその2人を捜し出すことが先決ですから」
署長の仲裁で2人は一旦黙ったが、腹の虫は収まったわけではなかった。
「それでその常葉の影山重治の自宅はどうなんだろう」
署長が署員にそう問うと、その署員は常葉は壊滅状態だから、もしその時に2人が常葉に行っていたのなら、火に飲まれているか、どこかの避難所に避難しているだろうと答えた。
「じゃあ至急各地の避難所に2人がいないか確認してくれ」
すると署長はそう署員に命令をしながらその場を立ち去った。
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