第一章 PA連携

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 後部座席の隊員二名が「またはじまった」と茶化す。出動時に小松田がぼやき、それを義仲がたしなめるのは恒例のことであった。 「気になるのけ」小松田が苦笑する。  義仲ははっとした。足元のサイレンスイッチを踏みながら、無意識のうちに腹を擦っていたのだ。 「べつに。もう四十二歳だし」と平静を装う。最近急に腰回りの肉が気になってきた。この三か月で、体脂肪率は三パーセント増加し、合計で二十一パーセントとなった。 「まだ気にするほどでねえよ、大丈夫だ。ストレスと運動不足だべ。身体を動かせば悩みも吹っ飛ぶ。腹も引っ込むって」五十一歳で、痩せすぎともいえるほどスリムな身体つきをしている小松田は「俺より若いくせに」と言いたそうな顔でハンドルを握っている。 「そうっすよ、隊長なんか全然大丈夫っすよ」後部座席からも声がかかった。たしかにダルマみたいな職員もいるにはいる。ああはなりたくない。 「そんなに都合よくいかねえと思うよ」今度は義仲が苦笑した。とどのつまりは摂取カロリーと消費カロリーのバランスの問題なのだが、今は出動中である。議論する気にはならない。  余計なことを考えてはいかん、と義仲は正面を見据えた。
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