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ライトブルーの双眸に呆れた色が浮かんでいるのを見て、ヴィルフリートはムッと顔をしかめる。グスタフが指折りの才人なのは知っているが、なぜこうも何もかも分かったかのような顔をしているのか。生意気だ。
「またオリーヴィア様に素直になれず照れ隠しに素っ気なく対応したのでしょう」
「うるさい!」
現に何もかも見透かされているのが腹立たしく、ヴィルフリートはつい怒鳴ってしまった。
氷の皇子と名高いヴィルフリートには、ある悩みがある――それは、侍女のオリーヴィアとの仲が全くといっていいほど進展しないことだった。
ヴィルフリートがオリーヴィアの命を助けたのは兄の婚約者であるにも関わらず惚れていたから、と見せかけて実は色々と便利なオリーヴィアを侍女としてこき使おうと考えたから――と見せかけて、実は実は、兄の婚約者であるにも関わらず惚れていたからであった。
3年前、アーベライン侯爵を糾弾するにあたり、当然皇族内で会議が開かれた。その席でオリーヴィアの出自を知ったヴィルフリートは「もう会うことができなくなるのではないか」と愕然とし、次の瞬間に「フロレンツは婚約を破棄するだろうからオリーヴィアへの想いを隠す必要がなくなる」と考えついた。しかし皇帝と第一皇子の怒りが収まらず斬首を主張して譲らなかったため、侍女とするしかなくなり、想いを告げるだのなんだのの願望は露と消えた。
それでも当時のオリーヴィアは、ヴィルフリートの口上にほんのりと涙を浮かべながら、夕陽のように暖かい瞳で微笑んだ。
『ありがとうございます、ヴィルフリート殿下。この御恩は生涯忘れず、不肖オリーヴィア、一生殿下にお仕えします』
思い起こしてみれば、オリーヴィアが養子であるのは明白であった。アーベライン侯爵や他の兄弟とは似ても似つかぬ美しい容姿、侯爵令嬢でありながらどこか表情に乏しく、華美なところもなく、いつでも庭園の隅で大人しく読書に耽っていた――。
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