第4話 氷の皇子は夜会に出る

6/6
前へ
/145ページ
次へ
 床に散らばった書類も拾い上げず、ヴィルフリートはオリーヴィアが持ってきた一張羅を手に取る。 「おや珍しい、夜会にご出席なさるのですか」 「今日のオリーヴィアはさすがに呆れた顔をしていた。これで欠席しては合わせる顔がない。建前が整い次第切り上げるから根回しをしておけ」  さすがオリーヴィア様、とグスタフは内心で拍手した。こうと決めたら(てこ)でも動かないが、オリーヴィアの困った顔ひとつあればヴィルフリートはちょろい。あらかじめ伝えておいてよかった。 「承知いたしました。ところで殿下、夜会に出席なさる前にお伝えしておきたいことがございます」 「手短に済ませろ」 「本日の夜会はオリーヴィア様にも出席するよう命じておきました」 「貴様ほど敏腕な側近は他におるまい!」  ヴィルフリートは素早く着替えを済ませ、執務室を飛び出した。
/145ページ

最初のコメントを投稿しよう!

341人が本棚に入れています
本棚に追加