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強い確信
湖の奥の山に夕日が沈んでいく。
僕とあみは部屋に戻り、隣に立ってそれを見ていた。
とてもきれいで、何枚か写真も撮ったけど、それよりも隣にいて夕日を浴びるあみの方が美しく見えた。僕は二人の関係を簡単に続ける方法が無い事や、国に帰ってしまえばまた独りの時間が待っていることを考えていた。
それぞれに全く違う暮らしをしているのに、好きだからと言って全て投げうてるものではない。それに、彼女が僕のことを好きかどうかすらわからない。
考えてみれば、あみは全く僕に要求をしない。
僕はあみのことがこんなにも欲しいのに。
チユを亡くしてから、時折死んでしまいたくなるぐらい気分が落ち込むことがあった。どす黒いクレヨンみたいなものが心を塗りつぶしていく。
何度かビルの屋上から下を眺めた。その時の気分と同じだ。
あみと一緒にいられるのは明日まで?
あみとどうしたらずっと一緒にいられるのだろう。
この時の僕は完全におかしくなっていた。
彼女の横顔を見た。夕日を浴びているあみ。僕のものだと昨日の夜確信した君。明日には僕の前からいなくなってしまうのか。
視線に気づいたあみが、僕と目を合わせる。
「……僕と一緒に死んでくれる?」
そう呟いて、僕は彼女の首に手を掛けた。なのに、あみは全く抵抗しない。
嫌がってくれたら、首を締める手に力を込める理由になったのに。
目を閉じていたあみに口づけて、後ろにあるベッドに連れて行った。彼女は何も言わない。ただ僕の頬に手を当て、
「大丈夫?」
と日本語で小さく呟いた。
「大丈夫じゃないよ。助けて……」
僕はそう言って、彼女の肩を押さえベッドにうずめた。あみは僕を受け入れた。昨日よりも、もっと身勝手に抱いたにもかかわらず。
何度も彼女を抱いた後に、ぐっすり眠ったその姿をカメラに収めた。僕の目から見たあみを忘れないように、シャッターを押して必死に切り取った。
月明りがずっと僕らを照らしていた。
空が太陽の光で白んできた時にはもう月は沈んでいた。
ほのかな朝の光の中で見たあみは今まで見たどんなきれいな女性よりも美しくて、空の向こうに行ってしまった月のようだと思った。
もうすぐ君は行ってしまう。
あみが起きるまで、僕はずっと彼女を見て考えていた。彼女とこれからも繋がり続ける方法を。だけど、ただ単に連絡先を聞けばいいというものでもないのははっきりしていた。
そもそも僕のこの気持ちは本物なんだろうか。
今だけの想いならそれで彼女を振り回すのはとても失礼だ。
でも、あみは僕のものだというこの強い確信はどこから来るのだろう。自分がわからなくて気持ちを持て余す。
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