『君だけのために』

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「瀬戸さん‼︎瀬戸さんって絶対音感とかある人?」 入学式前のひと時、緊張感漂う教室で一際飛び抜けた金髪。 「…た、多分。何となくは」 高校生になって一番最初に会話をしたのは、同じ中学(おなちゅう)だった長屋(ながや)元晴(もとはる)。元々目立つタイプの彼だったけれど、金色になった事でより一層目立っている。 私の記憶の限りでは、彼との会話はこれが初めてで…同じクラスになるのも今回が初めてだ。 「お願いがあるんだけど、いい?」 「な、内容による…かな」 髪が触れるくらい顔を寄せて、ドストライクのイケボが耳元で囁く。 「俺の歌を完成させてくれない?」 「…」 「お願い…」 「…な、何で私?」 「だって瀬戸さん、『ピアノの人』じゃん」 「…あぁ」
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