『君だけのために』

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翌朝、教室に入るとクラスメイトが歌っていた。 『この胸を満たした君が』 やめてよ…。 『消える事だけ恐れていたから』 やめてよ‼︎やめてよ‼︎ 『きっと今なら』 数人の男女の合唱が終わり笑い声が聞こえる。 「元晴、この歌めっちゃいいね」 「だろー?」 人だかりの真ん中には長屋君がいて笑っている。 長屋君はこういう人。 誰とでも仲良くて、いつも笑っている。知り合ってまだ数日のメンバーでグループができている。「すぐ覚えたじゃん」って言って、知り合ってまだ数日の女の子の頭を撫でている。 窓際で幾つもの明るい髪がキラキラ光る中、一際飛び抜けた金色。眩しい笑顔。 近づけたからこそ気付く…私はあの輪には入れない。 憧れだった長屋君との青春は叶わないと知った。 『俺と瀬戸さんしか歌っちゃダメ』 そう言ってたのに…嘘つき。
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