『君だけのために』

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一度くらい歌ってみたかった。そのチャンスをくれたのに…。 三つ目の夢を自分で潰した。 私だけが「瀬戸さん」で、私だけが「長屋君」 くだらない嫉妬だよ。わかってる。 一番乗りの誰もいない女子更衣室でジャージに着替える。 「思っていたのとは全く違う高校生活になったなぁー…」 なんだか笑えてきた。 「あ、いた‼︎何で先に来てんのさー」 未央や他の部活の子たちが続々と入ってきた。 「ごめんごめん。私ピアノに決まったしいいかなーと思って」 「てかさ、清花って歌上手いの?」 「別に上手くないよ。フツーだよ」 「明日、部活ないからカラオケね‼︎」 「いいけど、本当にフツーだからね?」 翌日、長屋君が何度か話しかけてこようとした。私はその度に席を立ち躱し続けた。 さすがに気づいてるよね?わざと避けてるって。理由なんてきっと分からないだろうけど…。 分かる訳ないよね。ごめんね。 だけどさ、私…長屋君と話したら多分泣いてしまうから。
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